禅の文化史

禅文化講座 ―読む、みる、感じる―

水曜日 14:30~16:00(隔週)

 

日本では古くから、「禅」と美術、庭、建築、能、詩歌などが混じりあい、中国の禅宗にはみられぬ姿となっています。「禅」はそもそもは大乗仏教の一宗派ですが、中世から近現代の日本文化のさまざまなテクストや表現形態で語られるようになりました。日本では、その文学・思想・芸術の精華(エッセンス)として、「禅文化」という豊かな世界を展開してきたといえます。

例えば、「日日是好日」「以心伝心」「悪事千里を走る(行く)」「心頭を滅得すれば火も自ずから涼し」などの故事成語が、禅語からうまれたものだったと御存知だったでしょうか。或いは、茶室に飾られた軸によくみられる禅語「是什麽」の読みと意味がサッとつかめるでしょうか。或いはまた、一休さんの「とんち話」も禅の教えに基づくものだというのはどうでしょうか――この講座では、こうした「禅文化」にかかわることばや芸術作品をとりあげ、その読み解き方になじんでもらう空間を創っていければと考えています。

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近現代に到ると、鈴木大拙(1870年~1966年)や西田幾多郎(1870年~1945年)などは、ことばで語りつくせず体験を旨とする「禅」を西欧合理主義に対抗すべき精神性として探究されました。また、「初心」の重要性を論じた鈴木俊隆(1905年~1971年)のZen Mind, Beginner’s Mind (1970)は、スティーブ・ジョブズ(1955年~2011年)の精神性に影響を与えるものとなりました。現代に生きる我々にとって、「禅文化」は少なからずヒントを与えてくれるものとなるのではないか――そうした世界に入っていく手がかりとして、「禅」と関連した芸術や文化表象を紹介します。こうしたものを読み、みつめ、感じながら、さまざまに「禅」の世界を共にいければと考えています。受講者の方からは「禅についてこんなことが気になっていたんだけれど……」といったリクエストをいつでもお受けしますので、遠慮なくお申し出ください。

ただ、「禅文化」はその多くが漢文(古文)で構成されるテクストで表現されても来ました。そうした事情も考えて、古典の文章が苦手な方にも訓読〔=国文法〕と中国語文法〔=漢文法〕に着目した読み方も丁寧にご説明し、自力で読み進めていける程度にまで習熟するお手伝いもしていきたく思っています。禅とその文化に関心を持っている方、これまで「禅や漢文はなんとなく敷居が高い」と感じて触れる機会がなかった方、これを機にイチから漢文をやり直したい方、……とにかく一緒に楽しんでくださる方を広く歓迎します。

 

◇講師プロフィール◇

 

飯島 孝良(いいじま たかよし)

上智大学外国語学部(仏語学科)卒、

東京大学大学院人文社会系研究科(宗教学宗教史学専門分野)博士課程修了。博士(文学)。

研究領域は、禅文化史(とくに一休)、宗教思想史(とくに近代日本における仏教とキリスト教)。

清泉女子大学講師、親鸞仏教センター(真宗大谷派)嘱託研究員。

主な著作に、「一休皇胤説と岐翁実子説」「一休の著作―『狂雲集』『自戒集』そして仮名法語―」「一休はどう読まれてきたか―その像の系譜―」(以上はともに、芳澤勝弘編『別冊太陽223 一休―虚と実に生きる―』平凡社、2015年)。

「基礎をどこまでもごまさかない」をモットーに、十数年にわたって国語・英語の指導に従事。

知識ゼロからであっても、体系的な知識の把握と文章の構造的理解を徹底することで、

自在に読み書きできるようになる講義をめざしている。

国語については東大など難関大学の入試問題指導から小学生低学年の国語指導、

英語については医系英語や難関理系英語から大学院入試英語などの指導に携わってきた。